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    そこに、房一は、酒のために紅くなつてはいるが、そして、まだ額のあたりに筋張つた色が立つてはいるが、稍やゝ前こゞみになつた半白の頭を見た。それは河原町の人などには見られぬ線の粗あらさとどぎつさこそあつたが、想像したよりもはるかに老人だつた。

    「あの人は来まいて」

    しかし、さういふ身体の忙しさより何よりこたへたものは、房一にとつては肉親の大病を診察するといふはじめての経験だつた。

    「まづい、まづい。酒がまづくなる」

    男は眼を閉ぢたまゝだつた。

    と訊いた。

    徳次は人の好い、いかにもさう信じこんだやうな眼で二人を眺めた。

    「さうぢや」

    「かう云ふと、君は笑ふかもしれんが、自分の親だの子だのいふ者を診るのはじつに困るんだ。なんだかそはそはしてね」

    男は力なげに口をあけていた。

    「いや、私はすぐこの近くで医者をしとる、高間といふ者ですが」

    「まだ、まだ」

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