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と、誰かが大声で叫んだ。
その住居の端々はしばしにまで行きわたつている潔癖さは、同時に大石正文夫妻の年来の好み、その生活の信条といつた風なものをも漠然と現はしていた。
「やあ、来てますね」
「まだ、まだ」
その時やつと、男は少しうなづいた。そして背中に負はれて出て行つた。
「さやうで御座りますか。お忙しいところを御苦労さまで」
「どうして又今まで黙つていたのかね」
「うむ、さうか。玄関のことか」
それは直造が案内状を出す間際になつて心づき、入念に考へたあげくに呼ぶことにした高間房一だつた。
云ひながら、ぽんと軽く下腹をたゝいてみせた。そして、微笑した、悪戯いたづらつ子のやうな目つきで、ぢつと房一の顔をのぞきこんだ。それは驚くほど巧みな打明けだつた。
「お髯がなくなりましたわ」
「何しに来た?」
云ひ終ると、直造は叮重ていちように頭を下げた。
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